美容師×ヘアメイク=ヘアメイク師が、ディレクションから撮影まで行うショートドラマ。今回公開した動画は、「不純真スタートアップ」です。
脚本を渡されたヘアメイク師は、物語の内容からどんな背景を読み取り、登場人物のキャラクターをどのようにヘアメイクで表現しているのでしょうか。テクニックはもちろん、技術者としてヘアメイク師が行った分析のプロセスや表現の仕方をまとめました。
コンテンツ
<物語の概要>
とあるサロンスタジオで働くダイゴは、開店準備をしている。そこへやってきたのは、ダイゴの恋人の妹、ゆかりだった。ダイゴに、好きな人に告白するためのメイクをしてもらいにきたと言う。
ゆかりの姉、ダイゴの恋人の みゆきは、ダイゴと同じサロンスタジオで働くスタッフでもある。わざわざ姉の恋人であるダイゴにメイクしてもらうゆかりを、他のスタッフも不思議そうに見ていた。
メイクが終わり、来店時と打って変わって大人っぽく仕上がったゆかりをダイゴが見送る。しかし、ゆかりは途中で歩みを止めて振り返った。
「ダイゴさんのことが好きです!」
ゆかりが告白しようとしていた相手は、姉の恋人であるダイゴだったのだ。さすがのダイゴも予期せぬ告白に言葉を失う。そこへ現れたのは、一部始終を見てしまったみゆき。気まずい空気の流れる3人の行方はいかに。
登場人物別ファッション・ヘアメイク解説
今回「不純真スタートアップ」に登場する人物とそのキャラクター、担当した役者さんをご紹介するとともに、ヘアメイクを解説します。
・ダイゴ役(橋詰龍さん)@_ryo_333
とあるサロンスタジオで働いている。みゆきの彼氏。
ファッションポイント
エプロンやアクセサリーなどで、イマドキのメンズ美容師感を演出。シャツを着用することで、少し大人で落ち着きを感じさせる男性に仕上げました。
ヘアポイント
ウェーブで動きのある無造作セットですが、あまりきついウェーブだとチャラさが出てしまうので、こなれ感のある大人っぽいセットを意識してゆるく決めました。ワックスとオイルを混ぜて使うことで、ツヤ感を出しつつ軽くホールド。部分的に毛束を引き出しながらスプレーで固めることで、凹凸がしっかり出てかっこよく決まります。
メイクポイント
脚本を読んだとき、役柄が美容師なので、肌が綺麗な方が美容のプロとして説得力があると感じ、スキンケア、ベースメイクを特に意識しようと思いました。
実際は俳優さんの肌がとても綺麗だったので、必要最低限のお肌を整えるためのメイクしかしていません。少し気になる赤みや青みを、コントロールカラーを使用して調整しました。
眉は、元々がはっきりしていたので、眉尻だけ書き足して形を整える程度でした。
・ゆかり役(小林萌夏さん)@mocha_runrun
みゆきの妹。姉みゆきの恋人であるダイゴに想いを寄せている。
ファッションポイント
ダイゴ本人は気づいていませんが、ゆかりにとっては好きな人に会いに行く設定なので、女の子らしい服装になるようにしました。また、ゆかりにとってダイゴは年上の男性です。黒のトップスを合わせることで、少し背伸びして大人っぽさを意識したような、甘くなりすぎないファッションにしました。
ヘアポイント
【サロンに来たとき】
前提として、ダイゴのことが好きという設定があるので、ある程度身だしなみは整えた状態と想像し、軽くセットしました。
全体的に自然と内に入るストレート。前髪は、メイク前とメイク後の違いをわかりやすくするため、あえて分けました。
【サロンを出るとき】
全体を外ハネにして、表面はコテで巻いて動きをつけました。来店前との変化は出しつつ、大人っぽさを感じられるナチュラルめなヘアセットに仕上げました。
メイクポイント
【サロンに来たとき】
カメラ映りが良くなるようにベースはしっかり整えましたが、メイクをしてもらうために来店しているので、全体的に薄く仕上げました。特に、リップと目元は視聴者の方から見ても違いがわかりやすいところだと思うので、ノーメイクに見えるくらい薄くするよう意識しました。
目力が出てしまわないように、アイラインはキワをパウダーで埋める程度にし、マスカラは使用していません。チークは血色感を足すくらいにしています。
【サロンを出るとき】
ゆかりは「ダイゴさんが素敵だなって思うメイクがいいです」とオーダーしますが、ダイゴはまさかゆかりの”好きな人”が自分だとは思ってもいないので、きっと告白が成功するように、ゆかりの本来の可愛さを引き立てるメイクをすると思います。
眉は下のラインをハッキリさせつつ自然な感じで、形はアーチにすることで可愛らしさをだしました。アイメイクは作り込むよりもナチュラルさを残したかったので、柔らかいカラーとラメを使用しキュートな感じに。また、まつ毛はしっかり上げてぱっちり見えるようにしました。
チークは、カメラで撮った時もわかりやすいように少し濃いめです。
・みゆき役(瀬口杏奈さん)@seguchi_anna
ダイゴと同じサロンスタジオで働いている。ダイゴの彼女でゆかりの姉。
ファッションポイント
ダイゴと同じく美容師なので、トレンドを取り入れたおしゃれなファッションを意識しました。秋らしいこっくり系のイエローは、白色と組み合わせることでくすみ過ぎず明るく見えます。また、だぼっとしたシルエットのニットはフリルスカートを合わせることでカジュアルになりすぎないようにし、ガーリーな感じに見えるようこだわりました◎
ヘアポイント
ダイゴやゆかりのセリフから、「仕事ができる」「みんな頼りっきり」「お姉ちゃんは面倒見がいい」としっかりした性格が読み取れたので、ラフすぎず大人っぽく見える外巻きにしました。前髪をシースルーにすることで抜け感を出し、さっぱりした印象になるように心がけました。
メイクポイント
姉としても先輩としても、気さくで優しい雰囲気を演出したかったので、全体的にピンク系を使いメイクしました。さりげなくグリッターを瞼に入れたのがポイントです。
・スタッフA役(川座かなさん)@kana_kawaza
ダイゴ&みゆきと同じサロンスタジオで働いている。好奇心旺盛なお調子者。よく先輩に注意されがち。
ファッションポイント
イマドキっぽく、尚且つサロンワークをしやすいように動きやすいファッションを意識しました。
ヘアポイント
川座かなさんご本人のウルフカットを活かし、表面は内巻き、内側の長く残っている部分は外ハネに。きちんとセットをしたウルフで、個性的で一癖ある美容師っぽいセットにしました。最後にオイルタイプのスタイリングを使用し、濡れ感を出しました。
メイクポイント
サロンで働くスタッフのメイクは割とはっきりとしたメイクの方が多いので、個性を活かした少し濃いめのメイクを意識しました。涙袋を目立つようにしっかり作り、中顔面短縮効果があるメイクテクニックも取り入れています。ウルフカットなのでその雰囲気と合うように、レッドブラウンのアイシャドウで一癖プラス。また、ホワイトライナーをワンポイント入れることで、メイク上級者に見えるように仕上げました。
・スタッフB役(樋郡めぐみさん)@megumi_higoori
ダイゴ&みゆきと同じサロンスタジオで働いている。スタッフBと仲が良い。同じくお調子者なので、よく先輩に注意されがち。
ファッションポイント
サロンワークがしやすいようなパンツスタイル。スタッフAと合わせてデニムにしてみました。
ヘアポイント
お調子者という役だったので、高めのポニーテールにして元気そうなイメージにしました。髪の毛が長いからまとめているという印象にならないよう、毛先は巻いて、美容師らしくスタイリングされているのがわかるように心がけました。
メイクポイント
サロンで働くスタッフとしてメイクはしっかりしつつも、”お調子者の脇役感”を出したかったので、カラーやラインは気持ち控えめにしました。眉がしっかりしている方だったので、いらない部分は薄い色を乗せてぼかしました。
・スタッフC役(飯塚心玲さん)@iiii_m71
ダイゴ&みゆきと同じサロンスタジオで働いている。アシスタントリーダー的存在。お調子者のスタッフAとスタッフBをまとめるのにやや苦労。
ファッションポイント
スタッフA、スタッフBと同じく、サロンワークがしやすいパンツスタイルに。トップスをシャツにすることでスタイリッシュに見え、リーダー的な真面目さが感じられるようにしました。
ヘアポイント
真面目さを出しつつも地味には見えないように意識しました。外ハネのウェーブスタイルにすることで、大人な可愛さを表現しました。
メイクポイント
チークを高めに入れることで、スタッフCを演じる飯塚心玲さんの可愛らしい雰囲気を活かしつつ、目元にブラウンを使うことで大人っぽく見えるようにバランスを調整しました。
ディレクションから撮影まで!幅広いスキルを持つヘアメイク師
脚本から読み取ったストーリーや登場人物のキャラクターを、どのように表現しているのかご紹介しました。ショートドラマの世界観を作り上げるために、ヘアメイクやファッションに込められた意図がたくさんあることがわかりましたね。
ヘアメイク師についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
【不純真スタートアップ】撮影協力
<脚本>
池田剛
https://youtube.com/@karusu1
https://twitter.com/Kouki_Birth
https://instagram.com/heiz_go/
<ヘアメイク、ディレクション、撮影、編集>
坂本りんな @linna.sakamoto
近藤李香 @mo.mo0428
山口愛夏
<撮影場所>
abie hair 市川店(https://www.abie.jp/)